AC版『将棋』アルファ電子が挑んだ本格将棋AIの夜明け

AC版『将棋』

1980年代初頭、ゲームセンターは新しい娯楽の中心地として、多くの若者で賑わっていました。派手なアクションやシューティングゲームが並ぶ中、一台のテーブル筐体が静かに存在感を放っていました。画面には見慣れた将棋盤が映し出され、プレイヤーは真剣な表情で駒を進めています。周囲の喧騒とは対照的な静寂が、その一角には広がっていました。

開発背景や技術的な挑戦

1982年、アルファ電子(後のADK)は、アーケードゲーム『将棋』を開発し、テーカン(現・コーエーテクモゲームス)から発売しました。この作品は、アーケードゲームとしては珍しい将棋を題材としたゲームであり、当時のゲーム業界に新たなジャンルを切り開く試みでした。特に、限られたハードウェアリソースの中で、将棋の複雑な思考ルーチンを実装することは、技術的な大きな挑戦であり、開発者たちの高度な技術力が求められました。

プレイ体験

『将棋』では、プレイヤーはコンピュータと対局し、勝利するごとに次の対局でコンピュータが駒を落としていくハンディキャップ戦が特徴的でした。初戦では平手での対局から始まり、勝利すると次は角落ち、さらに勝利すると飛車落ちと、徐々にハンディが増していきます。持ち時間は1分で、時間を使い切ると5秒の秒読みが始まる設定となっており、緊張感のある対局を楽しむことができました。

初期の評価と現在の再評価

発売当初、『将棋』はアーケードゲームとしては異色の存在でありながら、将棋ファンや新しいゲーム体験を求めるプレイヤーから注目を集めました。特に、日本将棋連盟のサロンにも設置されるなど、その本格的な内容が評価されていました。現在では、レトロゲームとして再評価され、当時の技術的な挑戦やゲームデザインの工夫が高く評価されています。

他ジャンル・文化への影響

アーケードゲームに将棋を取り入れた『将棋』は、その後のボードゲームやテーブルゲームのデジタル化に大きな影響を与えました。また、ゲームセンターという場で伝統的なゲームを楽しむ文化を形成し、幅広い年齢層のプレイヤーが集う場を提供しました。

リメイクでの進化

現代にリメイクされるとすれば、オンライン対戦機能の充実やAIの強化が期待されます。また、初心者向けのチュートリアルや、プロ棋士の解説モードなどを搭載することで、将棋の魅力をより多くの人々に伝えることができるでしょう。

まとめ

アーケードゲーム版『将棋』は、当時のゲームセンターに新たな風を吹き込み、伝統的なボードゲームをデジタルの世界で再現する試みとして高く評価されます。技術的な挑戦やプレイヤーへの配慮が随所に見られ、今なお多くのゲームファンに愛され続けています。

© 1982 アルファ電子/テーカン