1991年、ゲームセンターでは『ストリートファイターII』が旋風を巻き起こし、家庭用ゲーム機でも格闘ゲームの波が押し寄せていました。そんな中、メガドライブのカートリッジを差し込み、電源を入れると、荒々しいストリートファイトの世界が広がります。街角のリングで繰り広げられる一対一のバトル。観客の歓声とともに、プレイヤーは拳一つで頂点を目指す戦いに挑むのです。
開発背景や技術的な挑戦
『ストリートスマート』は、SNKが1989年にアーケード向けに開発した作品で、メガドライブ版はトレコが移植を担当しました。当時、アーケード版の格闘ゲームを家庭用機に移植する際には、ハードウェアの性能差から多くの制約がありました。特に、アーケード版のグラフィックやサウンドを忠実に再現することは困難であり、開発者たちは限られたリソースの中で最善の表現を模索しました。また、オリジナルのゲーム性を損なわないように調整を行うことも大きな課題でした。

プレイ体験
ゲームは全米格闘技大会「レッスル・ウォーズ」での優勝を目指すという設定で進行します。プレイヤーは空手家「ツトム・天野」またはプロレスラー「ジョン・シュナイダー」を操作し、次々と現れる強敵と対戦します。特徴的なのは、戦闘後に得られるポイントを「攻撃力」「防御力」「体力」に自由に振り分けられる成長システムです。これにより、自分好みのスタイルでキャラクターを育成する楽しみがありました。また、試合に勝利すると得られるファイトマネーを次の試合に賭けることができ、戦略的な要素も加わっています。
初期評価と現在の再評価
発売当時、『ストリートスマート』は他の格闘ゲームと比較して操作性や技のバリエーションに乏しいとの評価を受けました。特に、ガードや複雑なコマンド入力が存在しない点が物足りなさを感じさせたようです。しかし、現在ではそのシンプルさが逆に新鮮であり、成長システムや賭け要素など独自のゲーム性が再評価されています。また、当時の格闘ゲームの黎明期を知る貴重な作品として、レトロゲームファンの間で注目されています。
他ジャンル・文化への影響
『ストリートスマート』は、SNKが後に展開する『餓狼伝説』や『龍虎の拳』などの格闘ゲームシリーズの礎となった作品とされています。特に、成長要素やストーリー性の導入など、後の作品に影響を与えた点は注目に値します。また、当時の格闘技ブームやストリートカルチャーの影響を受けた作品として、ゲーム以外の分野にもその存在感を示しました。
リメイクでの進化
現代に『ストリートスマート』がリメイクされるとすれば、オンライン対戦機能の追加やグラフィックの高解像度化、キャラクターの追加などが期待されます。また、成長システムや賭け要素を活かしたストーリーモードの充実も考えられます。さらに、当時の雰囲気を再現しつつ、現代のゲームデザインに合わせたバランス調整が施されれば、新旧のファンにとって魅力的な作品となるでしょう。
まとめ
メガドライブ版『ストリートスマート』は、格闘ゲームの黎明期に登場した意欲作であり、当時の技術的制約の中で独自のゲーム性を追求した作品です。シンプルながらも成長要素や賭けシステムなど、他の格闘ゲームにはない特徴を持ち、現在でもその独自性が再評価されています。リメイクの可能性も含め、今後も注目されるタイトルの一つと言えるでしょう。
© 1991 TRECO / SNK