1986年、ゲームセンターの片隅に設置された大型筐体。プレイヤーがハンドルを握り、ペダルを踏み込むと、目の前の画面に広がるのはル・マン24時間レースの世界。時間とともに変化する空の色、刻々と迫るチェックポイント。『WECル・マン24』は、そんな臨場感あふれる体験を提供していました。
開発背景や技術的な挑戦
本作は、コナミが1986年9月にアーケード向けに発売したレースゲームで、ル・マン24時間レースを題材としています。開発はコアランドが担当し、実在する「サルト・サーキット」をモデルにしたコースを再現しました。コナミは当時、世界スポーツプロトタイプカー選手権のレーシングチームである「スパイス・レーシングチーム」をスポンサードしており、そのスポンサーライセンスを使用して本作を開発しました。タイトル画面には「Officially approved by Automobile Club de l’Ouest (A.C.O)」の表示があり、公式の承認を受けていることが示されています。
プレイ体験
プレイヤーは、規定時間内にサルト・サーキットを4周することを目指します。ゲームは残り時間制で、途中に数カ所あるチェックポイントを通過することで残り時間が加算されます。周回を重ねるごとにBGMが変わり、敵車の往来が激しくなるなど、難易度が上昇します。また、4周でちょうど一日が経過するように背景の明るさや空の色が変化し、昼夜の移り変わりを体感できます。
初期の評価と現在の再評価
本作のリリースと同時期には、セガから同様の大型筐体を用いたレースゲーム『アウトラン』が発売されました。当時、多くのオペレーターは『アウトラン』を選択し、その結果、『WECル・マン24』は設置されていても通常筐体版が多く、デラックス筐体を設置している店舗は少なかったとされています。しかし、現在ではそのリアルな再現性や独自のゲーム性が再評価され、レトロゲームファンの間で注目を集めています。
他ジャンル・文化への影響
『WECル・マン24』は、実在のレースを題材にしたゲームとして、後のレースゲームに影響を与えました。特に、時間経過による昼夜の変化や、リアルなコース再現は、後続のレースゲームにおける標準的な要素となりました。
リメイクでの進化
もし現代にリメイクされるとすれば、最新のグラフィック技術を駆使したリアルな映像表現や、オンラインマルチプレイによる世界中のプレイヤーとの競争が可能となるでしょう。また、VR技術を導入することで、より没入感のあるプレイ体験が期待できます。
まとめ
『WECル・マン24』は、1986年に登場したアーケードレースゲームで、実在のサーキットを再現し、時間経過による昼夜の変化など、リアルなレース体験を提供しました。当時は他の競合タイトルの影に隠れがちでしたが、その革新的な要素は現在でも評価されています。リメイクの可能性も含め、今後も語り継がれるべき作品と言えるでしょう。
(C) 1986 Konami Industry Co., Ltd.