1980年代初頭、ゲームセンターは新しいエンターテインメントの宝庫として、多くの若者たちで賑わっていました。ピコピコと響く電子音、カラフルな画面、そして新しいゲームへの期待感が溢れる空間。その中で、ある日見慣れないパズルゲームが登場しました。『タングラムQ』という名のそのゲームは、伝統的なタングラムを題材にしたもので、プレイヤーたちは興味津々でその筐体を囲んでいました。
開発背景や技術的な挑戦
『タングラムQ』は、SNK(新日本企画)が1983年に開発したアーケード向けのパズルゲームです。タングラムは、複数の幾何学的なピースを組み合わせて特定の形を作る中国発祥のパズルであり、これをデジタルゲームとして再現することは、新しい試みであり、技術的な挑戦でもありました。
タングラムとは
タングラムは、特定の形状を作り出すシルエットパズルとして広く知られており、正方形をいくつかの部分に分割したパズルです。構成要素は、大型の直角二等辺三角形2片、中型の直角二等辺三角形1片、小型の直角二等辺三角形2片、そして正方形と平行四辺形が各1片。このパズルは中国で生まれたとされていますが、詳細は不明です。中国の宋時代に黄伯思という人物が「燕几図」という書物を著し、これは7つの長方形の机を配置する方法について述べたものでした。明時代の厳澄がこれを基に三角形や台形を用いた「蝶翅几」を考案し、これがさらに進化してタングラムが生まれたという説があります。中国では、このパズルは「七巧」と呼ばれ、この名前は七夕の習慣から来ていると言われています。
プレイ体験
ゲームを開始すると、画面中央に完成させるべきシルエットが表示されます。プレイヤーは周囲に散らばったピースを選び、シルエット内に配置していきます。操作はシンプルで、レバーとボタンを使ってピースを選択・回転・配置します。初めは簡単な形から始まり、ステージが進むにつれて複雑な形が要求され、時間制限もあるため、プレイヤーの判断力とスピードが試されます。
初期の評価と現在の再評価
『タングラムQ』は、当時のゲームセンターで一定の注目を集めましたが、商業的な成功には至らず、正式な販売には至らなかったとされています。しかし、近年になって未発売のゲームとして再評価され、ゲーム保存活動やレトロゲーム愛好家の間で話題となっています。
他ジャンル・文化への影響
『タングラムQ』は、デジタルゲームとして初めてタングラムを題材に取り上げた作品として、後のパズルゲームに影響を与えた可能性があります。タングラム自体は教育的価値が高く、その要素を取り入れたゲームは、知育ゲームや脳トレ系ゲームの先駆けとも言えるでしょう。
リメイクでの進化
もし現代にリメイクされるとしたら、タッチスクリーンやモーションセンサーを活用した直感的な操作性の向上、オンライン対戦や協力プレイの導入、さらにはVR技術を用いた没入感のあるプレイ体験などが考えられます。また、AIによるプレイヤーのスキル分析や、適応型の難易度調整なども取り入れることで、より多くのユーザーに楽しんでもらえる作品となるでしょう。
まとめ
『タングラムQ』は、1983年にSNKが開発した未発売のパズルゲームであり、伝統的なタングラムをデジタルゲームとして再現するという先駆的な試みを行いました。商業的な成功には至らなかったものの、その独自性と革新性から、現在でもゲーム保存活動やレトロゲーム愛好家の間で注目されています。現代の技術を取り入れたリメイクによって、新たな魅力を持つ作品として再登場することを期待したいところです。
© 1983 SNK Corporation