1980年代後半、ゲームセンターには多種多様なゲームが並び、プレイヤーたちは新たな体験を求めていました。その中で、『ドカベン』は野球漫画の名作をゲーム化した作品として注目を集めました。カードバトル形式で展開される試合は、従来の野球ゲームとは一線を画し、プレイヤーに新鮮な驚きを提供しました。
ゲームの背後にある物語
『ドカベン』は、カプコンが1989年に開発・発売したアーケードゲームで、野球漫画の金字塔である『ドカベン』の版権を使用しています。プレイヤーは6つの高校から好きなチームを選び、CPUや2人プレイで対戦します。ゲームはカードバトル形式で進行し、投手と打者が1枚ずつカードを出し合い、ポイントの高い方が勝利するシステムを採用しています。
ドカベンとは

水島新司氏原作の野球漫画の金字塔「ドカベン」の版権を使用したカードゲームです。一般的な野球ゲームにしなかった理由は、原作の個性的なキャラクターたちの打撃や投球を表現するのが難しく、2D画をカットインで表示した方が再現しやすいことが考えられます。原作ファンは、漫画やテレビアニメで見たユニークな打法や投法を思い出しながら、簡単な操作でほぼストレスなく楽しむことができます。ただし、もっとも残念なポイントは、全キャラクターのカットインが淡白であること。主要クラスの「山田太郎」「岩鬼正美」などのカットインは原作のおなじみの構図が描かれていますが、スペシャリティーはありません。もう少しキャラクター毎にメリハリをつけた方がファンにとっては良い気がします。
プレイ体験
初めてプレイした際、カードゲームと野球の融合に驚きを感じました。試合の展開はテンポが良く、短時間で白熱した対戦を楽しめました。しかし、運の要素が強く、戦略性を求めるプレイヤーには物足りなさを感じる部分もありました。
時代ごとの評価と再評価
総合的な評価としては、原作ファンから一定の支持を受けつつも、ゲーム性に関して賛否両論が見られます。ポジティブな評価は約60%、ネガティブな評価は約40%と推測されます。
ポジティブな評価の要因として、まず原作のキャラクターや世界観が忠実に再現されている点が挙げられます。特に、山田太郎や岩鬼正美など主要キャラクターのカットインが原作の構図を踏襲しており、ファンにとっては懐かしさと親しみを感じられる仕上がりとなっています。また、カードゲームというシンプルな操作性により、アーケード初心者でも手軽に楽しめる点が好評を博しています。さらに、試合のテンポが速く、短時間でプレイできることも高く評価されています。一方、ネガティブな評価の要因として、ゲーム性の単調さが指摘されています。カードの選択が主な操作となるため、戦略性やプレイヤースキルの介在余地が少なく、運に左右される部分が大きいと感じるプレイヤーもいます。また、キャラクターのカットインが淡白で、主要キャラクター以外の演出に乏しさを感じるとの意見もあります。さらに、試合の進行に応じて追加のクレジット投入が必要となるシステムに対して、不満の声が上がっています。
評価者からは、以下のような改善点が望まれています。まず、キャラクターごとの演出にメリハリをつけ、より個性的な表現を追加すること。次に、カードゲームとしての戦略性を高め、プレイヤーの選択が試合結果により影響を与えるシステムの導入。さらに、追加クレジットの要求頻度を減らし、プレイヤーがストレスなく継続してプレイできる環境の整備が求められています。
このゲームは、原作『ドカベン』のファンや、シンプルな操作で野球ゲームを楽しみたい方におすすめです。また、短時間で手軽にプレイできるため、アーケードゲーム初心者や、懐かしの作品を体験したいレトロゲーム愛好家にも適しています。
発売当時、『ドカベン』は独特のゲームシステムで話題を呼びましたが、運要素の強さやコンティニュー時のクレジット要求などから、厳しい評価も受けました。しかし、現在ではレトロゲームとしてその独自性が再評価され、コレクターやゲームファンの間で注目されています。
他ジャンルやカルチャーへの影響
『ドカベン』は、スポーツゲームとカードゲームの融合という試みで、後のゲームデザインに影響を与えました。また、漫画原作のゲーム化作品として、メディアミックスの先駆けとも言えます。
もし現代にリメイクされたら?
現代の技術でリメイクされるとすれば、オンライン対戦や新たなカード要素の追加、グラフィックの向上などが期待されます。また、原作のストーリーを忠実に再現したモードや、キャラクターの育成要素を取り入れることで、より深みのある作品になるでしょう。
攻略
『ドカベン』は、高校野球をテーマにしたカードバトル形式の野球ゲームです。プレーヤーは6校から選択し、攻守に応じたカードで試合を展開します。カードには「ホームラン」や「三振」などの野球プレー内容と数字が記されており、数字が高い方が勝利します。漫画のユニークな要素を取り入れた斬新なゲームシステムは、運を重視したプレイスタイルで楽しめます。その独自性とレトロな魅力から、現在も多くのファンに愛されています。
ゲーム内容
プレーヤーは6つの高校の中から好きなものを選び、CPU(もしくは、2P)とカードバトルで対戦します。自軍の投手のスタミナがゼロになるか、9回表終了時に負けか、9回裏に逆転されるとゲームオーバーになります。コンティニュー機能を搭載しているので、カウントダウン中にコインを投入すれば続けることができます。
操作方法
方向レバー | 高校とカードの選択 |
ボタン1 | 決定 |
ゲーム画面

基本的なゲーム画面の見方です。
番号 | 説明 |
---|---|
① | 1Pのカード |
② | 対戦相手のカード |
③ | 1Pカットイン |
④ | 対戦相手カットイン |
⑤ | ランナー |
⑥ | 打者情報(攻撃時)/投手情報(守備時) |
⑦ | 対戦相手の打者情報(攻撃時)/投手情報(守備時) |
ストーリー設定


1989年の春の高校野球という設定です。全部で6つの高校がプレイアブルとなっています。
ルール


実際の野球と同じく、先攻と後攻があります。ひとりプレー時はプレーヤーは先攻、CPUが後攻になります。攻防はカードで繰り広げることなり、1PとCPU(または、2P)にはそれぞれ5枚ずつのカードが裏返した状態で配布。攻撃側と守備側が制限時間内に5枚の中から1枚を選択してめくります。攻撃側のカードには「ホームラン」「ヒット」など、守備側は「三振」「内野ゴロ」などの野球のプレー内容と数字が書かれていますが、めくったときにカードの数字が大きい方のプレーが発生してゲームが進行します。数字が同値の場合は、引き分け扱いとなり、再度、カードをめくっていきます。これを繰り返し、最終的に得点が多い方が勝ちとなります。なお、9回裏終了時点で同点のときは延長戦に突入します。


例えば、上画像の場合、カードをめくると攻撃(画面左側)は「3Bヒット」と書かれた数字3のカード、守備側は「内野ゴロ」と書かれた数字5のカードがでています。守備側の数字が5で攻撃側の数字3よりも大きいため守備側の内容が優先となり、結果、「内野ゴロ」となります。
出場高校
プレーヤーは6つの高校からひとつを選ぶことができます。各高校の出場メンバーは下記の通りです。
明訓高校

神奈川県代表。今大会注目度NO.1のキャッチャードカベンこと山田の活躍に期待。
白新高校

神奈川県代表。1年生ながらエースで4番の天才投手不知火を擁し、優勝候補NO.1。
東海高校

神奈川県代表。弱小野球部が、巨漢雲竜に引っぱられ一躍強豪チームに。
通天閣高校

大阪府代表。甲子園でもパーフェクトを狙うエース坂田は大会屈指の長身左腕。
土佐丸高校

高知県代表。謎のチーム。鳴門の牙犬飼を中心に、はたして、どんな野球をみせるのか!
いわき東高校

福島県代表。フォークボールの緒方と俊足の足利に支えられ、優勝を狙う。
出現カード
このゲームに登場するカードを解説します。攻撃時と守備時で出現するカードが異なります。カードの効果は、相手カードの数字より高いときに発動します。
カード | 効果 |
---|---|
ヒット | 1塁打 |
2Bヒット | 2塁打 |
3Bヒット | 3塁打 |
ホームラン | 1点+ランナー数✕1点 |
カード | 効果 |
---|---|
三振 | 1アウト獲得 |
フォアボール | ランナーを出す |
内野ゴロ | 1アウト獲得 |
内野フライ | 1アウト獲得 |
外野フライ | 1アウト獲得 |
カードの抽選ロジックはわかりませんが、プレーヤーとCPUの抽選確率が平等であると仮定した場合、「完全試合」「ノーヒットノーラン」のような大記録を達成できる確率は限りなくありません。このゲームの楽しみ方は漫画で登場したユニークなバッティングや投法を眺めつつ、運任せで好試合の実現を楽しむものです。
総括
『ドカベン』は、野球ゲームにカードバトルの要素を取り入れた独創的な作品です。当時のゲームとしては斬新な試みであり、その挑戦的な姿勢は評価に値します。現在でも、その独自性とレトロな魅力で、多くのゲームファンに愛され続けています。
データ
発売年 | 1989 |
メーカー | カプコン |
開発会社 | カプコン |
プラットフォーム | アーケード |
ジャンル | カード |
プロデューサー | 不明 |
ディレクター | 岡本吉起、大西猿吉 |
作曲者 | Y.K.Papa、Marumi、Gonzou、Tama、Piro |
キャラクターデザイン | Mikiman、Kitasan、Maririn、Kintaro |
販売本数 | 不明 |
(C)水島新司 (C)秋田書店 (C)CAPCOM CO.,LTD. 1989