アーケードゲーム『デスレース』は、1976年にアメリカのExidy社から発売されたレースゲームです。プレイヤーは自動車を操作し、画面上を動き回る「グレムリン」と呼ばれるキャラクターを轢いて得点を稼ぐという内容で、最大2人同時プレイが可能です。シンプルな操作性と独特のゲーム性が特徴ですが、その暴力的な表現が当時大きな論争を巻き起こしました。
開発背景や技術的な挑戦
『デスレース』は、Exidyが1975年に開発した『Destruction Derby』を基に改良された作品です。開発者のハウエル・アイビーは、既存のゲームに新たな要素を加えることで、短期間で新作を完成させました。ゲームのハードウェアはTTL回路を使用しており、マイクロプロセッサは搭載されていません。音声効果やグラフィックも限られた技術で実現されており、特に「グレムリン」を轢いた際の叫び声や墓標の表示など、当時としては斬新な演出が施されていました。
プレイ体験
プレイヤーはステアリングホイールとアクセルペダルを使って車を操作し、画面上をランダムに移動する「グレムリン」を轢いて得点を獲得します。轢かれた「グレムリン」は墓標となり、画面上に残り続けます。これにより、ゲームが進行するにつれて障害物が増え、プレイヤーの移動範囲が制限されていくため、戦略的な操作が求められます。シンプルながらも中毒性のあるゲームプレイが特徴です。
初期評価と現在の再評価
発売当初、『デスレース』はその暴力的な内容から多くの批判を受けました。特に「グレムリン」が人間の形をしていたため、実際に人を轢くゲームであると誤解され、メディアや市民団体から非難の的となりました。しかし、この論争が逆に注目を集め、結果的に販売台数が増加するという皮肉な結果となりました。現在では、ビデオゲームにおける暴力表現の先駆けとして、歴史的な価値が再評価されています。
他ジャンル・文化への影響
『デスレース』は、ビデオゲームにおける暴力表現が社会問題となる先例を作りました。このゲームをきっかけに、後の『モータルコンバット』や『グランド・セフト・オート』など、暴力的な内容を含むゲームが登場し、同様の論争を巻き起こしました。また、メディアがゲームの内容に注目し、社会的な議論を呼ぶというパターンも確立されました。
リメイクでの進化
もし『デスレース』が現代にリメイクされるとすれば、グラフィックや音響の向上はもちろん、ゲーム性の拡張が期待されます。例えば、オンラインマルチプレイの導入や、キャラクターや車両のカスタマイズ要素、ストーリーモードの追加などが考えられます。ただし、暴力表現に対する社会的な感受性が高まっている現在、内容の調整や年齢制限の設定など、慎重な対応が求められるでしょう。
まとめ
『デスレース』は、シンプルなゲーム性と限られた技術ながらも、ビデオゲーム史において重要な位置を占める作品です。その暴力的な内容が社会的な論争を引き起こし、ゲーム業界における表現の自由や倫理的な問題についての議論を促しました。現在では、その歴史的な意義が再評価され、ゲーム文化の発展における一つの転換点として位置づけられています。
© 1976 Exidy, Inc.